上手い絵が描きてえ

しがない絵を描く人間の悩みの多い日々

寝ても醒めても

絵のことばかり。
起きていてもずっと絵を描いているし、寝てみれば絵を描いている夢を見る。
起きたら夢で描いた絵は消えてなくなっている。感覚だけが残る。夢の残滓だ。
しかしこういう場合、夢で絵を描いていた感覚と労力ばかりが残って結果はない。
そうなりゃ疲れだって覚える。焦りだって募る。
現実には進んでいないページばかりが並ぶデータしかない。


絵を描くのが好きだ。
この気持ちに何一つ偽りはないし自分の最後の砦だとも思っている。
しかしこうも自分の絵に自信が持てず焦りばかりが募ると、楽しいのは楽しいが別の気持ちも生まれる。でも口に出したらそれを認めるようで癪だから言わねえ。

だが時々思う。
絵を描いているときは楽しいと思ってなくちゃいけないのか?
仕事では「自分の好きなことをしたくて、普通の職じゃなく趣味を仕事にしたんだろう。楽しくないならやめちまえ」と言われる。
同人じゃ「趣味なんだからそんなに構える必要はない。軽い気持ちで描けばいい。楽しくないならやめちまえ」という風潮がある。

好きなモンを仕事にしたら、毎日楽しく仕事をしなければならないのか?
同人だからってなあなあでいいのか?中途半端なモンを描いて満足できるのか?
異論は認める。だが納得はできねーかもしれん。

私はより良いものを描きたいと思うからこそ自分との葛藤が多い。
昨日の自分に満足できん。以前良いと思って描いたものも完璧じゃない。
まだ先があるんだと思いたい。到達すべきはもっと先にあるんだと信じたい。
しかも今のこのご時世、自分の評価は数字となってどこにでも現れる。
そして人の評価も見える。そして私は人と比べる。なぜ私は選ばれないのかと。
だから息が詰まる。それは分かっている。だがそう簡単に覆せるもんじゃない。

仕事だって同人だって、人に見られるのには変わりない。
人に見せるもので、自分の代わりの顔になるものを適当に済ますことはできない。
好きだと思って描いているからこそ、その程度を疑われるようなことはしない。
他人が好きだと興味関心を寄せているものを、自分の裁量で汚すことはできない。
美意識はそういうところにだって問われるもんだ。
絵にしろ、物語りにしろ、SNSでの発言にしろ。

楽しくなきゃ出来ないなんて思ってるやつはそれでいい。楽なんだからな。
だがその程度に見合った努力とプライドと熱量が善で、なんで血を吐くほど悩んで努力して熱量を捧げている私らが悪思想よりだと言われなきゃなんねーんだ。
おかしい。努力と熱量に伴った評価をくれ。


だが、まあ、このスタンスには欠点というものもある。
すべてが正しくて評価されるべきだとは思っていない。
なんにしろ綺麗に描こうとして筆は遅くなるし、昨日の自分が気に入らなければまた今日の自分が訂正を行う。延々と未完成が続く。終わりがない。
よって作品を出す機会は減るし、機会が減れば見る人間も減る。
母数が減ることはあっても増えることはない。努力も見えないから伝わらない。
この悪循環を断ち切るにはある程度の「諦め/妥協」が必要だ。
作品を終わらせる勇気。引き算する精神。これが一番難しい。
難題だ……自分をちょっと殺さないといけない。一瞬心臓を止めるしかねえ。


少し話の方向性が逸れた。
グダグダと吐き出したが、だからといって私はこれを人に押し付ける気はない。
私以外の人間が自分自身についてどう思ってようが私にはカンケーない。
勝手に好きにやればいい。私が勝手に闘志を燃やしているに過ぎないんだからよ。
だから私が人に押し付けない分、世間も私に何も押し付けないでくれ。
だがその姿勢を汲んで努力と作品は評価してくれ。
作品という結果を出すための努力をしているのに、結果だけじゃなく見えないものを含めて評価しろというのは詭弁かもしれない。
だがその矛盾を孕んでまでも、この飢えを飼いならせるならば縋りたい。

「描くのが好き」だけで創作ができる次元はもう通り過ぎちまった。
自分の「好き」だけが燃料にならない今、誰かからの「好き」が必要で求めたい飢えた人間は山ほどいる。遠慮や謙虚は要らない。反応は創作者を生かす糧になる。
いちばん堪えるのは、きっと「無反応」だ。



「全てにおいてバランスよく」なんて無理なのかもしれんが、少なくとも私の周りにはそれができている人が3~4人はいる気がする。
彼女たちと私の違いは何だ。経験か知識か時間か。人間的な練度か。
負けたくない。追いつきたい。追い越してみたい。追い越されたくない。
上も下も油断ならない人間ばかりだ。いつ誰に火がつくか。
ぽっと出の人間に負けることほど悔しい思いはない。
認めざるを得ない実力があると思い知らされているからこそ悔しい。
他の人間にできることが、自分はできないとは思わない。
頑張ればできることは多くある。負けたくない。
自分と自分の作品と、自分を好きでいてくれる人のために。

負けたくない。